第2章

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  「コイツ抵抗しねぇぞ? 見た目もあれだが、受け身とは性格もどぎついこった!」  そう言って柄の悪い日に焼けた長髪の男が、倒れている人の背中に強烈な蹴りを入れた。全く躊躇していない。  よく見れば、倒れているのは、女子生徒だった。  これは質が悪い。本心から黒木は思った。 「桐崎って実はMなんじゃねぇ?」 「なるほど。キモいわ」 「こんな痣だらけで可哀相に」 「誰にやられたんだよ?」 「俺達じゃね?」 「あははははははは!!」  取り囲む数人の中にも、女子生徒が紛れていた。それでもやはり暴行を加えるのは男で、蹴られる度に倒れている女は苦痛に呻く。  しかし、無駄だとわかっているのか否か、抵抗はしていない。  一度止んだと思われたが、再び男達が蹴りはじめる。 (この屑共が……!!)  そこで黒木は飛び出した。  偽善を振り回す自分よりも、見なかったことにして立ち去る自分の方が、黒木の中では許せなかったからだ。
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