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その直後、鬼心は消え、それと同時に夢浮橋の体が頭から吹っ飛んだ。
そして、鬼心は姿を現す。
「じゃあ《№Ⅸ》。お前自体になんら恨みなんてないんだけど、《№Ⅸ》という称号には恨みがあるんだよね。というわけで、君には最上級の苦痛を味わって貰うよ?」
鬼心は笑顔で、前方三十メートル上空で停滞しながら、切断された腕を手で押さえているカヒに言った。
「まずは、君には二度と《能力》が使えないようにしてあげよう。ほら、早くこっちに来てよ。"痛みなんか認識出来ない程の痛み"を与えながら、その《能力》を使用不可にしてあげるからさ」
鬼心はそうカヒに向かって微笑み掛ける。
だが、カヒは動かない。
否、動けない。
理由は先程の夢浮橋と同じだ。
ただ恐怖。
ただ威圧。
ただそれが――ただそれだけがカヒの全身全霊を支配していた。
「なんだよ、早く来てくれよ。君が来ないなら――俺から迎えに行くよ」
鬼心が笑顔でそう言うと、紅い液体が鬼心の周りに浮遊しだし、次第にそれはカヒへと続く階段のように、円盤状の踏み台へと形成されていった。
そして、鬼心は一歩踏み出す。
そして、鬼心は二歩踏み出す。
そして、鬼心は三歩踏み出す。
そして、鬼心はカヒの目の前まで来る。
「やぁ、君に会いたくて会いたくて俺から会いに来ちゃったよ」
と、鬼心は微笑み掛けた。
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