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その拭いた手ではない、もう一つの手に持つ写真がちらりとエロスの瞳に映る。
「これは…?」
きょとんとした顔で、エロスはまた質問をした。
それに少しモモスは悲しい顔をすると、ニコリと笑う。
「僕の母だよ」
「お母様…ですか?」
「そう、もう死んだけどね」
モモスの悲しい一言に、エロスはうつむいた。
それに気がついたのか、モモスは近くの大きな紙袋から小さな花束をとりだす。
…赤や白、桃色の鮮やかなカーネーションだった。
「それは…なんですか?」
またエロスが問いかける。それにモモスは穏やかな声で答えた。
「カーネーション。人間界で今日は母の日だから、この日にありがとうを込めて贈るっていうこの花を買ってきたんだ」
「…そうなんですか…」
エロスはまじまじとその色とりどりのカーネーションを見つめると、ニッコリと笑った。
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