【第一章】

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「蓮。朝だよ」 朝っぱらから俺の部屋に響く兄貴の声 「うるさい……」 ふわりと舞う桃の香り ………兄貴の香水だ 「相変わらず寝起き悪いんだから」 その言葉と同時に体が浮いた 朝は嫌い。 眠いから。 いつも朝は兄貴が抱き上げて運んでくれる 俺は落ちないようにしっかり腕を回すと また目を閉じる 眠い… 恐らく階段を降りてるのか とんとんと、心地よいリズムが体に響く あと何秒 動かないですむかな… ああ、ほら、 睡魔が俺に向かっておいでおいでをしてるよ…… ぐっばい、現実 「蓮。ほら、ちゃんと立って」 「…っ…ぅん……」 ごめんよ睡魔、俺はそっちへは行けないみたい よっこらせ、と言うように もぞもぞと兄貴から降りると 少しよろけながら リビングへと足を進めて、大きめの扉を開ける。 「お早う御座います。蓮。」 「…ぉはようございます…かあさん…」 挨拶はきちんとする。幼い頃から言われていた事だ。 …きちんとしてるのか?これ
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