北極星は白く輝く

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ゾーヤが主人の横で槍を立て、今度は凛々しく一礼した。秘書から軍官の貌になっている。応答にメノラへの解説を織り込む。 「行き先はソリア共和国首都ゼーランですね。安全を期すなら通常馬車で五日程度ですが、急務でしたら三日をご提案します。二日で越境出来ますので」 南部には険しい山脈があるのだが、まだ大陸中心部であるから丘陵が多く、なだらかな峠を使って越境することになる。中枢部に向かう街道も多く実装されているため、ショートカットをしつつ夜通し馬車で行けば、三日は十分可能な範囲である。人通りが少なければ怪物が増えるし、道もぼこぼこしていてもう数日ほど延びることだろう。 「ほお、可能なのかい? どうか頼むよ。荷物も内密にね。ゾーヤ」 「はい、すぐに手配を。荷物は明朝馬車に積み込んでおきますので」 契約成立。それが一番安心である。街を出る前に盗られました、ではどうしようもないどころの話ではない。 ミーレは軽く、深々とメノラは頭を下げ、失礼致しましたと退出した。
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