北極星は白く輝く

8/9
前へ
/62ページ
次へ
家の門から、貴族街の外まで少しある。門を出ても、メノラはまだ緊張で息が詰まったままだ。立ち並ぶ家々も石造りの立派なもので、広場は色とりどりの花々も植えてあり、憩いの場となっているのだろうか、上品な身なりの人たちが談笑しているのが見えた。花の手入れをしているのは庭師だろう。 「真新しい情報はなし、ですね」 「仕方ないよ。どんな情報を得るかちゃんと決めないと、引き出そうにも引き出せないからね」 貴族街を過ぎて喧騒に紛れながら、ルーベンス。俺もそういうのはあまり得意じゃないしな、とミーレがぼやく。緊張の解け、感覚が戻ったメノラはそれを意外に思った。 「そうなんですか? てっきり全てご自分でやっておられるのかと」 「いや。どうもすぐに疲れてしまって駄目だ。すぐに甘いものが欲しくなる」 「一時期それでちょっと太ってやめたんだよね、確か」 「ああ、あのときは本当に死にたくなった。おかげで仕事も失敗しかけるしな」 ルーベンスの合いの手もあり、だんだん円滑に会話が出来るようになってきた。ミーレは主にずけずけした剣のせいで憂鬱そうにしているが、メノラにとっては情報があって非常に喜ばしい。 「ミーレさんにもそんなことがあるんですね」 「今でこそそれなりだけどさ、昔はもっとあったよ?」 ほら着くぞ、とミーレはルーベンスの柄を軽く叩いた。はいはい、という声とおかしげに笑う声が宿屋に吸い込まれる。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加