ロマンチシズム

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一人ぽつんと残されたメノラは、馬車に揺られながら周りを見渡す。職人の国ソリアから来たのであろう工芸品を売る行商人、逆にデモもなく安定したドゥリエールに引っ越すのか、家族でザックを背負う者。まだまだ見える人はそれぐらいで、朝日が目に眩しい。上着のフードを視界を狭めない程度に被った。 家にある本は母が置いていった専門書ばかりのため、全く近頃のことには疎い、と考えを巡らす。森はドゥリエール王国に属しているとはいえ外部との接触は遮断されているし、ソリア共和国やチェルニ帝国、ましてや存在そのものが伝説なイースリース王国のことは独自文明が発達しているということくらいしかわからない。ミーレもあまり話してくれなさそうであるし、ルーベンスも主人が望まないことにはあれで口が堅い。とりあえず伝説の島については保留にするしかなかった。杖を抱く。 ――まだ知る必要がないということですね、カカベルさま。 「メノラ」 「ひゃっ」 そこにルーベンスの声がかかって驚く。真後ろから聞こえてきたので、そこに置いてあるのだろう。 「ど、どうしたんですか? 寝ないんですか?」 「いやね、ミーレ、ほとんど常にオレを腰に吊ってるんだけど、話してやれだって」
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