ロマンチシズム

9/14
前へ
/62ページ
次へ
意外と平穏に過ぎていく。街道は安全で、ゾーヤ曰くそれでもと念を押した末の雇用だったようだ。先程ゴブリンを焼き払った以外は盗賊の襲撃もなかった。昼に差し掛かっているからだろうか。人も増えてきた。色々な出で立ちの人がいて、メノラは新鮮に眺められる。重そうな金属鎧の武人。ミーレのような軽装の剣士。巨大な手甲をつけた武道家。中でも刺突剣を持った華やかな装束の女には目を奪われた。思わず自身のほつれた金髪を見やる。もう一度女を見る。見事な光沢の蜜のような金髪だった。少しへこんだ。 今回は急務と言うことで、昼食は日持ちのするものを馬車の上で採る。幌の後ろ部分を開け、お腹空きましたーと声をかけると、サンドイッチを渡された。なんでもいいが大柄な男に無言でずいっとサンドイッチを差し出されるのは微妙に怖い。おどおどと受け取り、ゾーヤの負担を減らすべくメノラの見張りは昼食中も続行。ゾーヤが気さくで話しやすく、すぐに懐いたことに、ミーレは少なからず安堵を抱いていた。髪について相談をしてみる。 「そうねー、あたしは特になにもしてないけど。あんまり容姿に気を払う方ではないわね――あら、生ハムが美味しいわ。どこのかしら」 「いいのか? 秘書だろうに」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加