ロマンチシズム

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ミーレは主人や客に不快感を与えないのが前提だと思う。ただゾーヤの場合、清潔感はあるので、最低限のボーダーラインは余裕でクリアしているが。後頭部全体を覆うシニヨンカバーは真っ白を保ってあるし、ミドル丈のワンピースだって白いままだ。ゾーヤはミーレの髪に目を留めた。 「そう言うミーレは案外きちっとしてるわね」 「傭兵とて接客業の一部だと考えている」 丁寧に髪をすくことこそしないが、手ぐしでさっと整える仕草は見る。光沢が際立っているのではない。特徴は透明感だ。要所の傷のついた鎧はともかく、服装は上品なので、あまり傭兵らしくないといえばそうかもしれない。何の情報もなしに見れば、中流階級の戦士というところだろうか。一般に貴族出の戦士は華美な服装をしていることが多い。 ゾーヤはメノラの金髪をぐしゃぐしゃかき回した。驚いて彼女は顔を上げる。 「いいじゃない、メノラの髪もあたしは素朴で好きよ?」 「わあ、ありがとうございます!」 「ルーベンス、あれは誉めているんだな?」 「人生プラス思考だよ、ミーレ」 少しざっくばらんすぎるかもしれない、とミーレは思った。
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