ロマンチシズム

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経験は確かに俺の方が上だが、メノラの知識量にはとても敵わない、とミーレは思う。寧ろ書物だけでそれだけの知識を詰め込めることに驚嘆すらしていた。生まれの関係上、勉強をしていなかったわけではないのだが。偏に才能の問題だろう。その代わり、ミーレは剣の才能に恵まれた。だからこうして、軽々とルーベンスを繰ることが出来る。ルーベンスの話は続く。 「悪意を抱えたままの人間って、魔族に転生するんだ。よっぽどひどいと神様の干渉で地獄に落ちるんだけど、さ」 「へえ、よく知ってたな」 「いやその。鵜呑みにしないでくださいよ」 メノラも一瞬鵜呑みにしそうになったが踏みとどまった。ん、とミーレは首を傾げる。魔族はこういうものだという伝承はあるが、ルーベンスのように確信を持って語るのは不可能だ。サンプルが少なすぎるからである。じと目でルーベンスを見る気配。 「ホントだって」 「情報源はどこですか? じゃないと納得しませんよ、わたし」 ルーベンスは声を詰まらせて、絞り出す。意外に慎重だ。決まり悪げにミーレは頬を掻いた。 「随分前に聞いたんだよ、今ちょっと思い出して」 メノラとしては喋る剣よりも書物を信用したいところである。ルーベンスはまあオレの記憶も曖昧だからなあ、とそれでも譲歩する姿勢を示した。
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