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「すまなかった、俺としたことが。ミーレ・エーテリアルエールだ」
聞き、というより、読み覚えのある名だ。そう、確か、歴史書だったように思う。場所はどこだっただろう。
「エーテ……貴族の方でしたか」
「まあ、な」
「そうでしたか。わたしはメノラ・カカベルと申します」
「オレはルーベンス。リストだよ」
ルーベンスというらしい先の声が言った。単語で文献を連想する。
リスト。
意思を持つ武器の総称である。
昔は異世界との交流があり、その異世界からもたらされたものだとも、神が作ったものだとも言われている。ただ一つわかっていることは、完全に未知の物品であり、世界に少ししかないということだ。
「……」
「驚いたか?」
「ええ、とても……」
昨日の星の並びの理由が、少しわかったような気がした。きっとこの青年と声のことなのだ。
ミーレは微笑んだ。どこか悲しげだ。
「皆俺がリストを扱うと聞いて化け物扱いするものだが、貴方はしないのだな」
「化け物? 何故ですか?」
「さあね。それはわからない。武器が人を選ぶからだろうか」
指先が剣を撫でた。くすぐったいよ、とルーベンスが言う。クセのある長剣といった印象。豪奢でも繊細でもないが、機能美に溢れている。なににせよ、リストを扱うから化け物扱いするという発想は、メノラにはよくわからなかった。
「……あの」
「ああ、なんだ?」
心なしか優しい表情である。
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