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「私を森の外へ、連れ出して下さいませんか。先程のドラゴンという話が本当ならば、私は住めません。あ、魔法は使えます。ご覧になった通りです」
彼はしばらく考えていた。やってあげなよ、とルーベンスも言った。一つ目の理由は、探究心。本で満たされていたのが、外部からの影響で拡張された。
「それに……探し物が、あります」
「報酬は?」
「これを」
懐から宝石を取り出した。魔方陣を封じてあり、簡単な護符にもなる。自信作でもあり、かなりの金額で売れる筈だ。手放すのは惜しいが、そんなことは言っていられない――探し物のためにも。一人では絶対に不可能だった。機を逃してはいけない。飛び込む。
「ミーレ、問題ないよ。相当だね」
この場合の『問題ない』は、労働力に見合うということだろう。
「……いいだろう。引き受けよう。ただ俺は迷っていてここに来た。道案内はしてくれ」
深い森から出る間、怪物とは頻繁に出くわした。
ミーレは流れの傭兵だというだけあって強く、ひゅんひゅんと斬る。メノラも魔法はかなり使える方だが、世間の相場を知らない彼女には、剣も彼の技量も新鮮な驚きだった。
「そこを東へ」
「こっちか」
「ミーレそっち西」
などと挟んではいたが。
ただ、怪物には出くわしたが、どれもこれも小物で、ドラゴンは出てこなかった。やがて街道に出る。
「――ああよかった。普通のドラゴンなら平気なんだが」
「平気……ですか」
「ああ。あれは論外だ。……息が切れているな。大丈夫か?」
「……はい……」
少しの間でわかったことは、この青年が物言いの割にそれなりに優しいということだった。それでも街を想像するだけで、疲れも眠気も吹き飛んだ。
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