ささくれ

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彼女がにこにこしながら、ちょっと声を荒げた僕を見ている。 この子は僕がすきなんだなぁ、と手に取るようにわかって、なんだかあたたかくなる。 「ほら、手出して」 「はい」 素直に差し出された彼女の華奢な手にできた小さなささくれを、僕は爪きりで丁寧に切っていく。 綺麗な手。 決してそんなことはしないけど、僕はこの手をいくらでも慈しめるように、いつだって折ってしまうこともできるのだ。
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