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――コウ。
日々高校の、アイドル。
学校イチ可愛いと評判である。
だから、ちょっと廊下を歩くだけでも、
「きゃーっ! コウちゃーん!」
「今日も可愛いなあ……」
「写メ撮らせてくれーっ!」
「こら! 撮影は規則違反だ!」
男女問わず群がる、群がる。
ファンクラブの規則も大変だなー、なんて思いつつ、コウは取り巻きにふわりと笑ってみせた。
「いいよ? 会長にはヒミツ、ね」
そんな言葉に、皆は真っ赤になって崩れ落ちていく。
すると、遠くから、何やら低い声がした。
「んだよ、ちょっと顔がいいからって、調子のってんじゃねえっつーの」
ふと見ると、男子生徒がひとり、口を歪ませて立っていた。周りには、やはり数人の男子が、ケラケラと笑っている。
「…………、ふうん」
小さく呟いて、コウはぽてぽてと歩み寄る。ぎょっとした男子達の前まできて、ぴたりと立ち止まった。
そして、潤んだ瞳で彼らを見上げ、一言。
「コウ、皆と仲良しでいたいんだ……ダメ?」
――超ヨユー。
ぼっ、と顔を朱く染めた彼らは、へたへたと後退る。コウは一転、妖艶に微笑んで、すたすたと歩いていく。
さあ、5メートルごとにほぼこれの繰り返しだ。笑ったり、手を振ったり、あるいは照れてみたり。いつもこんなものだから、ろくにうろつくことはできない。
もっとも、それはコウが皆を大切にする主義だからだが。ファンサービスはコウにとっては趣味のようなものなのだ。
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