探偵物語

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 御神 真悟。余談だが、彼は午前中と日曜日は仕事をしない主義だ。      朝から携帯が「BAD CITY」と繰り返し、御神を叩き起こす。    携帯で時刻を確認するとまだ9時だ。   「はい……御神私立たぁぁああん偵事務所」    途中の欠伸はご愛嬌とさせていただくにしても、酷く低いトーンでの応答だ。   『あ、御神さんですか?私です山本です』   「や……山本さん?」    少々しつこいが、彼は午前中と日曜日は仕事をしない主義だ。      彼が住んでいるのは事務所の二階という、通勤時間徒歩0分の物件だ。勿論大家は涼子。    元々は、涼子の両親が経営していた喫茶店だったのだが。その両親が死んで、涼子が引き継ぎ、御神へと店舗部分が貸し出されたのだが。    アパートと一体、三階建てのこの建物には大家の涼子も住んで居る。もっとも今の時間、涼子は学校だというのが御神の救いでも有る。    涼子が居ては、彼の主義など守られっこ無い。     「こんな時間に何ですか?」   『昨日お話したように今日、娘の家に行くんですよね?』    質問に質問で返され、少々肩透かしを喰らい、山本の言いたい事を御神は理解した。    すなわち、朝から働けと。    勤労意欲が売り切れの御神は、手探りでキャメルを探るが、どこにも無い。昨日涼子に奪われたままな事を思い出し、紫煙の変わりに溜め息を吐く。   「そうは言ってもですねぇ、我が社の営業は昼からでして……」   『え? しかしあのお嬢さんは、この時間にと……』    リョーコちゃんの奴ぅ……と、山本に聞こえ無い程度の声で呻き。改めて認識する。    涼子が居ては、彼の主義など守られっこ無い。      御神は諦め、山本に了解する。山本が車で出迎えに来るという話だったので、その間に御神はシャワーを浴びてしまう事にした。
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