5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
『にんにく』
アイツがいつも言ってた言葉。
勉強も運動も全然出来なかったし、みんなからは、バカ、バカ、と言われていた。
自我が強いというか、アイツは他人との関係を築こうとはしなかった。
でも一切の関係を断絶していたわけじゃない。
唯一、俺とはよく遊んでいた。
アイツとは保育所からの付き合いだった。
よく、おばあちゃんと手を繋いで保育所に来ていた。
俺は、周りの子に比べておとなしい性格だねとよく言われた。
聞こえが良いようにいえばそうだか、実際俺はおとなしいというより内気で、内向的な性格だった。
砂場で遊んでいる子たちに声をかけることも出来なかったし、外で遊ぼうとは全然しなかった。
俺は独りで部屋にこもって、ブロックや人形で遊ぶような子供だった。
俺はまだ赤ん坊だった頃から保育所に通っていたが、アイツは途中から保育所に来たヤツだった。
俺はそのとき五歳、アイツも五歳だった。
アイツはよく絵を描いていた。クマの絵を描くのが上手だった。
「クマの絵、上手だね」
「うん」
俺がそれを言うとニコッと笑った。
それからいつも二人で遊ぶようになった。
アイツも外で遊んだりするのは苦手らしく、ずっと部屋にいて絵を描いている方が好きな性格だったから、打ち解けるのにそう時間はかからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!