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「あーつーいー」
少年は、不意に声を漏らすと、立ち止まりゆっくり後方を振り返る。彼の声に力は無く、照りつける陽光に体力を相当奪われているようであった。
そして、彼は仲間の顔を見上げると、温かな息を吐きながら首を傾ける。
「ねえ、そろそろ休まない? それか、海に入って涼もうよ」
少年の頬は真っ赤に染まり、それは彼の体温が高くなっていることを示しているようだった。
そして、気の抜けた声を聞いた青年は、呆れた様子で溜め息を吐き、少年の肩へ両手を乗せる。
「ダーム……休むったって、近くには日蔭とかねえぞ?」
青年は、刺々しい口調で言い放つと、わざとらしく大きな溜め息を吐く。
「それに、海に入って涼むにしたって、水着はどうすんだ。お前はガキだからまっ裸でいいかも知れねえけどよ」
そこまで話すと、青年は少年の肩から手を離して悪戯な笑みを浮かべた。
他方、ダームは頬を膨らませて青年の顔を見つめると、不服そうに声を漏らす。
しかし、自分の言葉だけでは勝てないと分かっているのか、ザウバーに言い返すまではしなかった。
その代わり、彼は女性の顔を見上げると、彼女の助けを待つように唇を噛み、蒼い瞳を潤ませる。
すると、それを見た女性は微苦笑し――
「確かに、暑くて敵わないな。だが、どうせなら涼しい場所を見つけて休まないか?」
――自らの意見を述べていった。
彼女の話を聞いたダームは、渋々ながら頷き、ゆっくり踵を返して歩き始めた。
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