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幼い頃、親の仕事の都合で別れた幼なじみから、数年ぶりの手紙。これを聞いて普通は何を想像するかな?
甘酸っぱい青春の香り?
ラブコメのフラグ?
それともそんなのあるわけない?
それもまた良しとしよう。
想像は人それぞれだからね。最後選んだ人はお約束とかそういうのがわかってない人なんだなぁ、と流しておこう。
それじゃあ文面は?
小さくて丸っこい文字の可愛い文面?
ピシッとした丁寧な印象の文面?
けど、やっぱりそんなのあるわけない?
それもまた良しとしよう。
最後のを選んだ人は……もうこういうお話読まない方がいいんじゃない? 想像の中でぐらいスーパーヒーローやモテモテになってもいいと思うよ、僕は。悲しくなるけど。
さて、何故僕がこんな話をしているのか、もう予測はできてるだろうと思うけどあえて言おう。
幼なじみから手紙が来ました。
しかも女性だぜひゃっほい。
……なんて喜ぶのは一般ピーポーの考え方。
しかし、こんな物語を見ている熟練者の諸君ならもうおわかりいただけただろう。
そう、僕は全く喜べなかった。と言うかリアクションが取れなかった。それは何故か。
百聞は一見にしかず、とはよく言ったもので。
以下が、その幼なじみからの手紙の文面。
『アンシェル、私は遂に魔王になったぞ! 今から来るのじゃ!』
ねっ? 無理でしょう?
いやぁ、流石に唖然としたよ。だって命令口調だよ? 僕に一切の拒否権無しだよ? 一体どこのワガママ貴族だよ。むろん、僕は悪くないので文句の一つや二つぐらい言ってもバチは当たらないよね。あ、ちなみにアンシェルってのは僕の名前です。
そこじゃない。根本的に違うだろ、ってツッコミが来そうなんで説明しとくと、彼女は元々頭良かったしさ。昔から『私、魔王になるー!』って崖の上から言ってたし。いや、崖の上からは嘘だけど。このファンタジーな世界じゃ普通なんだよ、普通。たぶん。
しかし、なぜに『魔王』なんだろうなー、とは思ったさ。賢者どころか大賢者にもなれた筈なのに。あれか、親が黒魔術とかの使い手だったからかな。まぁ、今となっては謎だけど。
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