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・夏吉
「とりあえず連絡するから、野球はあとでな」
教育に関してはとても型破りな教師であるが、意外に仕事はこなしているらしい。
・夏吉
「あー、大掃除ご苦労さん。今日はもう帰ってもらうけど、明日・明後日は学校に来るんじゃないぞ。一・二学期もあったからわかると思うが、特別指導日だからな。成績がヤバくて進級できない奴は、明日電話させてもらう。電話があった奴は明後日、親と一緒に学校へ来てもらって、俺と今後の話をみっちりさせてもらうぞ」
夏吉の言葉で不安になったのか、クラスメイトたちが少しざわついた。
・夏吉
「まあ、今のところ心配はない。それにテスト終わってもうすぐ春休みだ。お前たちも少し、叫びたい気分だろ? な、そうだろ?」
またまた、担任の生物教師が意味不明なことを言いだした。
いつものことなのだが。
こんな性格の夏吉先生が担任ということもあり、このクラスは比較的ノリのいい奴が多い。
・夏吉
「今から俺が5秒数える! ゼロと言った瞬間、お前たちは各々に叫びたいことを叫べ! 内容は自由だ。いくぞ!」
それから本当に夏吉はご~ぉ、よ~ん、とカウントダウンし始めた。
指を折る間、クラスメイトたちはずっとざわめいている。
・夏吉
「に~ぃ、そろそろだぞ、い~ち! せぇの!」
思いっきり「ゼロ!!」と叫んだ瞬間、クラスメイトが各自に思い思いのことを叫ぶ。
「〇×∞◇@☆#¥※〒▽Ω!!!!」
もはや言葉とはわからない喧騒っぷりである。
ほとんど全員が叫び、それが収まると夏吉は静かに口を開いた。
・夏吉
「おし、今どさくさに俺の悪口叩いた奴は成績-5点だ。何、俺の耳は悪口に関しては聖徳太子並みだ、間違えはしない。明日は覚悟しとけよ。以上だ。委員長、号令」
ざわざわ、とクラス中が騒がしくなった。
―――――
号令が終わって、クラスメイトたちは次々に帰っていく。
その中で、白良龍馬だけは未だに机に突っ伏したままだった。
・生徒
「おーい、帰んないのー?」
傍まで来たクラスメイトの1人が、そんな龍馬の背中をつつく。
小柄な身体にはブカブカの学ラン、その肩に鞄を背負っており、すでに帰る準備は万端である。
この小さい身長からチーと呼ばれている彼こそ、龍馬の親友、鈴下柚輝である。
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