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放課後の静まり帰った特別授業の教室のある校舎。
その中に理科実験室はあった。
放課後のその校舎の中には全くと言って良いほど人がいない。
俺は走って走って、理科実験室にたどり着いた。
息を整えながら、教室の扉を開ける。
暗幕をはったその教室は真っ暗だ。
俺が手探りで電気を付けると、気を失ったままロープで縛られ、
口にガムテープをつけられた状態の捺が転がっていた。
俺は急いで駆け寄り、しがらみを全て取り去る。
「・・・・」
涙が出た。
「もう、大丈夫だからな。」
無意識に抱きしめ、何度も捺の名前を呼んで泣き続けた。
あの時みたいだ。
目を覚ますか覚まさないかの状態で、
何度も何度も捺の病室の前を行ったり来たりした、あの時を。
どうして俺はあの時、手を離したんだろう。
ずっとずっと握って離さなければ良かったのに。
「捺…」
温かい。
温かいから大丈夫だろ?
そう自分に言い聞かせているのに、不安は離れない。
「捺…」
好きなんだ…
ずっと好きなままなんだ…
すげぇー、ダサい。
涙とまらねぇ。
「…りょ…お?」
俺が涙でくしゃくしゃになっていると、小さな小さな声が聞こえた。
「捺?」
俺は捺の顔を見ると、急に自分が恥ずかしくなって、
捺から離れた。
「お前…ストーカーにあってたんだろ?」
「・・・・・」
捺は意識を戻したばかりで放心状態だったものの、
段々と意識がはっきりとしてきたらしい。
俺を見る目が、どんどん痛そうな、怯えたような目に変わっていった。
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