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「だから、あの時、手を離されて、地面に背中打ち付けて…
死にそうになって…
裏切られた気が…した…」
捺は顔を歪めて、自分の背中をさすった。
「消えないっ…!」
苦しそうに痛そうに、涙を流し始めた。
「背中の傷も消えない…!
心の傷も…ずっとずっと消えないっ…!!」
「・・・・・」
俺は何も言えなかった。
「消えないっ…消えないのっ…!!」
もう良い。
…もう、良いから。
「許さなくて良い…
許してほしいけど…許さなくて、良い。」
俺はゆっくり立ち上がった。
「・・・・・」
「謝っても謝っても、許される事じゃないんだ。
何をやっても、許される事じゃない。」
無理して許そうなんてすんなよ。
そこまで、人間って強くねぇだろ。
「幸せになれよ。
そうしたら、消えるから。」
諦めるから。
だから最後に。
少しだけ、触れさせてくれ。
「・・・・・」
「・・・・・」
ゆっくり、頭を撫でた。
それはたった、2秒ほどの。
それから黙って教室を出た。
何となく、走りたくて、
全力疾走で、家に帰った。
痛くて、痛くて、胸が痛くて。
俺の見えない傷は消えなくて良いから、
だからあいつの傷だけは、早く消えてくれ。
そんな風に、願ったんだ。
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