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薄暗い山道を必死にあるいている少年が居た。
山歩きに慣れていないのか、息も絶え絶えに山頂をあおぐ。
遥か遠くに見える頂きは雲に覆われ、少年を拒んでいるかのようだ。
疲れ果てて近くの岩に腰掛ける。
途端に
ぐぅ~…
腹の虫が食料配給の悪さに抗議の声をあげる。
(そういや、昨日の夜から何も食べていないんだっけ…)
背負い袋を下ろし、中から固くなったパンをとりだして口に運ぼうとする。
その瞬間、脳裏に病床に伏す母親の顔、そして村の子供達の罵声がよぎり、少年はうなだれる。
『伝説の花を取りに生きたい?!馬鹿言うなよ』
『山にはおっかない動物がいるんだぜ?』
『お前なんか、あっという間に喰われちまうさ』
『あーぁ、また泣いた。こんな奴ほっといて、あっちであそぼうぜ』
ぶんぶんと頭を振って、子供達の嘲るような顔を頭から追い払い、ふうとため息をついた。
(黙って出て来ちゃったからなぁ……母さん、おこってるかな…)
(でも……!)
食べかけのパンを握り締め、再び山頂を見上げる。
そのどこかに咲くという白い花を見出さんとばかりに-----。
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