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カチンコの音が撮影現場に響き渡った。
「はい、じゃあ休憩は入りまーす」
スタッフの1人がそう言うと、照明やマイクスタッフ達が一斉に次の撮影の準備へ取りかかった。そんな中、ユーリが出演者席に倒れ込むように座り込んでいた。
「ユーリ、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえよ。見てくれよこの手」
ユーリが差し出す左手には、指の間という間に豆が出来ていた。
「円閃牙とか考えた奴アレだろ。やる身になってみろよ。ペン回しどころの話じゃねぇって」
愚痴るユーリに、エステルが苦笑いで返す。
「あ、でも大変と言えばジュディスもですよね。殺陣の撮影の度にワイヤーアクションなんですから」
そう言うエステルの視線の先には、スタッフにワイヤーを外してもらっているジュディスの姿があった。
「でも良いじゃない。本人が楽しそうなんだから」
そこへリタがジュース片手に割り込んできた。
「私なんて回りっぱなしよ?しかも魔法が後付けだから、やってるこっちはイマイチ実感ないし」
「いやー少年少女達の苦労はまだ甘いって」
更にレイヴンが話に参加した。頭からタオルをかぶり、片手で団扇をあおいでいた。
「なんだよ、ベテランにはベテランの苦労があるってか?」
「おっさんなんて籠被るんだぜ?回りは見えないわ、中は蒸すわで大変な事この上無い」
「うわ、オッサン汗くさい!来るな!」
リタが文句を言いながらレイヴンから距離をとった。
「ちょ……今はカメラ回ってないんだからそんな虐めないでよ」
「臭いものは臭いのよ!」
「酷いじゃないの。嬢ちゃんは――」
エステルは苦笑いを浮かべ、さりげなく後退りをしていた。それを見てレイヴンがガックリと肩を落とした。
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