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「それは、どうして?」
リリスは尋ねた。
不可解だ。
とにかく、この少年は不可解だ。
戦いが本格化してきている中で、急に現れた存在。
リリスの中では、同じ種族の血を引く親近感よりも警戒の方が遥かに強かった。
少年は少し思案してから答えてくれた。
「……アイリスさんから話を聞いたんです。それで、興味が沸いて。一度会ってみたくて」
その名前には聞き覚えがあった。
あの時、学園祭の時、レイの敗北の瞬間にリリスの傍に居たあの女性の名がそれだった。
となれば、敵ではなさそうだ。
安心する。
髪型や髪色、眼の色こそ違うがどことなく彼の面影のある少年。
そんな少年が敵というのは、正直嫌だった。
「で、その制服着てるってことは、うちの生徒なの?」
聞いたのはエレナだ。
少年は屈託のない笑顔で答えてくれた
「はい、短い間だけですが、此方でお世話になる事になりました。来週から編入します」
おかしいと、リリスはふと思った。
転入生なら、制服はおろしたてのはず。
なのに、少年のポロシャツは少しよれている。
新品にしては、妙だ。
「そういえば、歳を聞いて無かったね。何年生?」
エレナの問いが、リリスの思考を阻害する。
少年は控えめな笑みのまま答えてくれた。
「二年です。ですから、皆さんとは同い年になるはずです」
「そうだね。…ってなんで知ってるの?」
一度は頷きかけたエレナが、ふと我に返ったかのように言った。
少年の笑みは崩れない。
「アイリスさんから聞いたんです。みんな同い年だって」
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