disturbing

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それならば納得は行く。 だが、それ以前に。 「貴方は、どこから来たの?」 「帝国です」 ルークの答は短かった。 素っ気ない、っと言っても良かった。 故郷にいい思い出が無いのだろうか、笑顔が固いものに変わっている。 「このご時世に、よく王国(こっち)に来れたね」 エレナが不思議そうに、いや事実不思議に思っているのだろうが、そう言った。 それについても同感だが、リリスには別の疑問があった。 ただ会いたいというだけで、国境を越えてまで来るものなのだろうか? 「まあ、アイリスさんというパイプがありましたから」 ルークの返答には淀みが無い。 まるで、予め用意していたかのようにスラスラと答えている。 リリスにはそれが腑に落ちなかった。 なぜか、を問われると答えに窮する。 だが、『欲しい本があるから本屋に来た』ような気軽ささえ感じられる彼の態度が信じられない。 敵国から来るのに、そんな軽さなんて有り得ないはずなのだ。 「うそ、じゃないよね」 知らず、リリスは口にしていた。 口にしてから、しまったと思った。 周囲の空気が凍る。 なんて失礼な事を言ったのかと、すぐに謝ろうとしたが。 「やっぱりばれましたか。うん、納得です」 ルークは心底嬉しそうに笑っていた。 「何が納得? ってか嘘って?」 エレナは状況を飲み込めていないようだ。 それはリリスも同じで、意味が分からなかった。 なぜ、嘘を見抜かれて喜ぶのだろうか。
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