disturbing

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「……僕は王国の出身です。ただ、あまり細かいことは話してはいけないことになってますので」 「それは、アイリスさんからの言いつけ?」 リリスが確認すると、彼は首肯した。 「はい。まあ、込み入った事情がありまして」 あからさまに怪しい理由だが、リリスは何故か信じることができた。 ――どうして? 自問してもわからない。 ただ漠然と、彼の心理が理解できるだけなのだ。 ――レイに似ているから? それもあるかもしれない。 彼の髪と眼、それを淡い茶色にすれば、髪型こそ違えど雰囲気はそっくりである。 ただ一つ、眼の形だけが彼とは少し異なっているものの、兄弟だと言われればすぐに納得できるだろう。 そんなことを考えていたリリスの頭に、エレナの声が滑り込んできた。 「……自分でも怪しいとは思わないの?」 「思います。僕、明らかに不審者ですよね」 苦笑いするルーク。 彼自身、その自覚はあった。 当然だと、ルークは思う。 明かせない部分が多すぎる。 嘘の下手くそな自分がここに来たのは、そもそも間違いだったかも知れない。 彼の姉の言葉が思い出される。 『どうせすぐにボロが出るんだし、無理して会いに行くことはないんじゃないの?』 確かにその通りだが、それでも会ってみたかった。 フレイダル=カーライル。 どうしてもその人柄が、能力が気になる。 伝え聞く通りの人なのか。 ルークはどうしても、自分の目で確かめてみたかった。
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