Ray Carlyle

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「わかったな? アイリス、フレア!」 茶髪の男性が叫ぶ。 男性はゆっくりと剣を抜いた。 鮮やかな、燃えるような緋色のサムライソード。 その刃を見て、彼の傍にいた少女は隣の弟の手をつかむ。 少女は丁度二桁に達したぐらいの年齢だろうか。 弟はもっと幼い。 まだ学校にも通っていないぐらいの容姿だった。 「行くわよ、フレア」 「でも、お父さんが!」 引っ張る姉に抵抗する弟。 振り返り、不安げな瞳を父に向ける。 そんな息子に向けて、男性は二カっと笑った。 「なーに、心配すんな。俺を誰だと思ってるんだお前は?」 「でも……」 幼子は感じ取っていた。 この家に攻め入ってきた今回の敵は、普通ではないということに。 言葉にできるほどの知恵はまだ無い。 ただ、不安で不愉快な感情が胸に渦巻いていた。 そんな彼の心中を察したのか、男性は表情を和らげた。 「それより、姉ちゃんを頼むぞ。俺が戻るまで、男はお前だけだからな」 「……うん」 そう言われては、彼も頷くしかない。 大人しくこの場を去った二人の子供を、男性は温かい目で見送った。 その、直後。 静かだった廊下の壁を突き破り、ソレは姿を現した。 彼の正面に現れたソレは、一見普通の人間に見える。 だが、ソレがもはや人の範疇を超えていることを、男性は理解していた。 「見つけたぞ、レイシス!」 ソレが吠える。 レイシスと呼ばれた茶髪の男性が笑った。 「俺は逃げも隠れもしてねえよ。俺がお前の挑戦を受けなかったことがあったか?」
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