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「怒らねえんだな。姉の敵に与したんだぞ。あいつらと同じように、お前を殺す気でいるかもしれねえんだぞ」
絞り出すような、低い彼の声だった。
それは威嚇か、あるいは警告か。
いずれにしろ、そういう意味を含ませようとしているのは分かる。
声が震えていたのは、果たしてレイの気のせいか。
「……貴方には貴方の理由があった。ということでしょう」
自分でも驚くほど、スラスラと言葉が出てくる。
状況から予想できていたからなのか、そもそも自分がこういうことを気にしないからなのか。
あるいは、こうなることを望んで――
「随分と落ち着いてるじゃねえか。普通、もっと取り乱すもんじゃねえのか? 『なんでお前が!』みたいにさ」
「ど、どうして貴方がー」
「ひでえ棒読みでやんの」
彼は笑った。
少し無理のある笑みだったが、それでも笑っていた。
「なあレイ。お前がわざわざ帰ってきたって事は、ここが戦いの舞台になるってことでいいんだよな。この大会が、この学校が」
「でしょうね。なんなら、期を待たずに今此処で先に勝敗をハッキリさせてもいいとは思いますけど」
「俺はそこまで焦ってねえよ。首根っこ掴まれてるのはそっちだろ?」
急所を抑えられているのはこちら。
確かに、彼女がそうであるなら、リリスはもう人質同然と言っていい。
しかし。
「僕はそうは思いません。彼女はきっと、貴方よりさらに優しい人でしょうから。情にほだされて、何もできなくなるのがオチですよ」
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