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「随分逆撫でが上手くなったじゃねえか」
彼は言った。
声の震えが、心なしか収まっているような気がした。
「そういうつもりではないですが。それよりいいんですか? 代表選手は集められているのでしょう?」
「そりゃこっちの台詞だ。んでもって俺は代表じゃねえ。トーマに止められたんだよ」
なるほど、流石にオーバースペック過ぎたか。
高校生で強化を使えるのは、確かにあまりに圧倒的すぎる。
そう言ってしまえば、レイも似たようなものではあるのだが。
「それじゃ、貴方抜きで国内予選を勝ち上がったのですね」
「そういうこった。リリスなんて、一回も負けなかったんだぜ。俺が出なくても十分だった。頼れる大エースさ」
――ああ、よかった。
僕がいなくても、彼女はちゃんと一人で歩けたんだ。
「ほっとしたか?」
そう言う彼は笑っていた。
表情に出ていたか。
しかしそれが幸いしたようで、レイには二人の雰囲気が元に戻ったような気がした。
「「「かわいい~~~~~!!!」」」
所変わって、体育館の舞台袖。
王帝対抗戦の選手を紹介するために、全校生徒がここに集められていた。
そしてその選手は、出番の為に舞台袖に待機している。
そこで、マーセル学園の女生徒三人は声をそろえた。
きゃいきゃいきゃいきゃい、やんややんや。
文字通り姦しい彼女らに囲まれているのは、高校生が集まるこの場には似つかわしくない幼い少女、ルーナだ。
そんな女性陣に、というかその内の一人に、茶髪の少年は戦いていた。
「うわー。引くわー。何なんだあれ。姉さんが姉さんじゃねえみたいだぜ……」
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