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しかし、紅い髪というのはヴァンパイアの証である。
それを隠さずに堂々と闊歩するとは。
それがどういう意味を持つのか、アレンも話には聞いていた。
「紅い髪、か。あの娘、鉄のメンタル持ってるの? 理解がある人ばかりじゃないのに」
率直な感想。
差別はいけない、とは言っても、事実それは存在する。
わざわざそういう類の人種を刺激する事もないだろうに。
「ま、あいつはどっちかというとメンタルが弱い方だったんだけどよ。まあいろいろあってな。その辺はクソ兄貴のおかげかね」
この発言も含め、このロイという少年の言葉の節々に感じられる信頼感。
「やっぱりいい人なんだね。お兄さん」
アレンはそう確信した。
一目見て、リリスはこの少女がやんごとなき身分だと理解した。
帝国の選手団は、当初の彼女の想像の斜め上を行っていた。
軍事大国たる帝国の代表ともなれば、屈強な戦士やクールで凛々しい女魔術師、という印象だったのだが。
今日、彼女の前に現れたのは明らかに初等学生女の子と、まだ中学に上がったばかりにしか見えない男の子、そしてそんな男の子を容赦なく従える銀髪の少女。
そしてもう一人、軽くウェーブのかかった栗色の髪をした少女。
その佇まいはこの場にいる誰よりも優雅で、気品に満ちて、制服のブレザーなんかよりドレスの方が似合うのでないか。
そんな女性が、まさか選手として現れるとは。
「クラウディア=ベルーガルと申します」
ああ、なるほどと、リリスは納得できた。
正真正銘の、お姫様だったのか。
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