again

38/46
前へ
/234ページ
次へ
しかし、紅い髪というのはヴァンパイアの証である。 それを隠さずに堂々と闊歩するとは。 それがどういう意味を持つのか、アレンも話には聞いていた。 「紅い髪、か。あの娘、鉄のメンタル持ってるの? 理解がある人ばかりじゃないのに」 率直な感想。 差別はいけない、とは言っても、事実それは存在する。 わざわざそういう類の人種を刺激する事もないだろうに。 「ま、あいつはどっちかというとメンタルが弱い方だったんだけどよ。まあいろいろあってな。その辺はクソ兄貴のおかげかね」 この発言も含め、このロイという少年の言葉の節々に感じられる信頼感。 「やっぱりいい人なんだね。お兄さん」 アレンはそう確信した。 一目見て、リリスはこの少女がやんごとなき身分だと理解した。 帝国の選手団は、当初の彼女の想像の斜め上を行っていた。 軍事大国たる帝国の代表ともなれば、屈強な戦士やクールで凛々しい女魔術師、という印象だったのだが。 今日、彼女の前に現れたのは明らかに初等学生女の子と、まだ中学に上がったばかりにしか見えない男の子、そしてそんな男の子を容赦なく従える銀髪の少女。 そしてもう一人、軽くウェーブのかかった栗色の髪をした少女。 その佇まいはこの場にいる誰よりも優雅で、気品に満ちて、制服のブレザーなんかよりドレスの方が似合うのでないか。 そんな女性が、まさか選手として現れるとは。 「クラウディア=ベルーガルと申します」 ああ、なるほどと、リリスは納得できた。 正真正銘の、お姫様だったのか。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31682人が本棚に入れています
本棚に追加