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「クラウディアは意地が悪い」 セシルと呼ばれた少女が、むくれたまま短く言い切った。 「申し訳有りません。つい」 ふふふ、と笑う皇女 リリスがそんな二人を暖かい気持ちで眺めていると。 「初めて見た。同じ色の瞳」 急にセシルが、こちらに話題を振ってきた。 「そうだね。私も、家族以外で紅い眼を見るのは初めてかも。セシルちゃんは誰譲り?」 「誰でもない。私だけ。魔力が関係してるらしいけど、詳しくは私も知らない」 魔力が、というところでリリスは思い出す。 燃えるような緋色に輝く、本気の時の彼の眼。 一瞬浮かんで、すぐにしまい込む。 今、感傷に浸っても仕方ない。 きっともうすぐ、会えるはずだから。 信じていれば、きっと。 「……」 リリスがそんな思いにふけっていた僅かな時間。 セシルはじっとリリスを見つめていた。 ――もしかして、王国でアイツを待ってる人って。 ふと直感的に浮かんだ、推量。 なぜだろう。 セシルは、自分の胸が微妙にざわつくのを感じた。 自分でも訳が分からない。 どこにもそんな要素はないはずなのに。 そもそも推量と言うにも根拠が無さすぎる。 だから、なにも言わないでおいた。 人違いかもしれないし、そうだったら気まずい。 第一、本当にそうなのだとしたら、アイツがこの場にいない事が不自然なのだ。 会いたいなら、ここにいるはず。 席を外すなんてこと、絶対にない。 「ねえ、セシルちゃん達は大会までの間どう過ごす予定?」 自分の胸の内と格闘していたセシルは、その声に引き戻される。
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