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試合当日までは、まだ三日ある。
その間、王国観光でもしようと思っていたのだが――
そのことを伝えると、ヴァンパイアの少女はニッコリ微笑んだ。
「じゃあ、私たちが案内しよっか。選手は休み貰ってるし」
「なんだよ。さも当然のように現れやがって。てめえどれだけこっちに迷惑かけたか分かってんのか馬鹿弟子」
「え。師匠(せんせい)も知らなかったんですか?」
「たりめーだ。そもそもどこからそんな情報が入る。で、そもそも何でてめえはちゃっかり帝国の代表になってやがる」
「かくかくしかじかです」
「真面目に答えろや馬鹿弟子」
ベッドの上で、黒髪の青年が非難する。
レイは今、病院に来ていた。
学校にはいないらしいトーマの居場所をアイリスに尋ねたところ、帰ってきた答えがここだった。
もう退院間近らしいが、二ヶ月近く入院しているらしい。
聞いた時は驚いた。
しかし、すぐにレイは一つの可能性に気がつく。
トーマに促されて自分のいきさつを細かく報告した後、尋ねた。
「全治二ヶ月もの重傷。いえ、意識不明の重体でしたか。師匠ともあろう人が、まさかここまでこっ酷くやられるとは」
「ま、猿も木から落ちるってな」
ケラケラ笑うトーマ。
しかし彼の魔力の流れが僅かに乱れたのを、レイは見逃さなかった。
「相手はシリウスですね?」
「お前、もうちょっと、なんか、躊躇ったり気を使ったりしろよな」
観念したようにトーマが苦笑いを浮かべる。
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