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「『銀狼』、そして『白鬼』。まだ二人いるだろう」
「彼等の力が貴方に及ばない事を、この僕が気がつかないと思うんですか?」
トーマは黙り込んだ。
レイには感知がある。
無論、魔力の量だけで実力が決まるわけではないし、事実、トーマの魔力量はシリウスに遠く及ばない。
それでも、転移を利用した超高速戦闘ができるのがトーマの強みだと、レイは知っている。
そのトーマですらコレなのだから、いかにあの2人がパワーで勝っていても、レスポンスの差でシリウスを捉えられないのがオチだろう。
転移を利用した人間より速く。
その可能性があるのは――。
「ハーフにはハーフ。恐らくこれが、アイツには有効だろうな」
トーマが言った。
そしてそれは、レイも同じで。
「そうでしょうね。問題は彼女が強化を使えるようになるかどうか、ですが」
「つい最近、史上初めて十代の強化使いが現れたんだぜ? そんなことが二件も続いくとは思えねえ。なによりお前が――」
「嫌ですね。これ以上、彼女が背負うものを増やしたくありません」
レイは笑った。
自然と、笑ってしまった。
自分の言っていることに、半ば自虐的な意味が入っている事を自覚して。
「勝算はあるのか? 実力云々じゃねえ。あいつの裏をかける、あるいは俺の転移を越えるような、お前だけの『強み』。それを前面に押し出さねえと勝てねえぞ。ラッキーパンチを起こそうにも、勝てる部分が一つは無いと厳しいぜ」
師の言葉はもっともだ。
実力で劣る以上、そういうものは必要になる。
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