again

45/46
31683人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
病室を後にする。 これから数日、どう過ごそうか。 そんなことを考えながら、レイは宿泊先のホテルに向かう。 自宅の近くに居ながら宿泊とは変な話ではあるが、帝国の選手団であれば当然のことである。 聞けば、セシル達はリリス達に王国の都心部を案内されるらしい。 双方を知るレイとしては、彼等が仲良くなるのは嬉しい。 いくら国の仲が悪くとも、個人の仲は別だ。 例えこの対抗戦が代理戦争という側面を持っていたとしても、当人たちはただ腕試しをするだけなのだから。 ――しかしながら。 自分はそうはいかないだろう、とレイは思う。 いや、確信している。 ならばどうするか―― 「あら。珍しいじゃない。貴方から私に用がある、だなんて」 ソファーに座っているレイに、黒髪の女性が話しかける。 帝国の代表だから予算が出ているのか、レイ達が泊っているホテルはロビーからして豪奢なところだった。 高い天井と、そこに吊り下げられたシャンデリア。 やわらかな黄色の光に包まれたこの空間は、むしろ落ち着かないぐらいに非日常である。 そのロビーの一角にある待合スペースに、レイはアイリスを呼び出した。 「すみません。少しだけ、尋ねたいことがございまして」 「いいわよ。可愛い甥の頼みですもの」 父の姉を自称する妙齢の女性はふわふわ笑った。 未だにレイは、この女性の年齢が分からない。 父より上なら、既に五十近いはず。 しかし彼女の容姿は、どれだけ高く見積もっても三十には届いていないだろう。 父よりむしろ、自分のほうが歳が近い気がしてならないのだ。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!