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しかし起き上がったは良いが、このぶちまけられた血だけはなんとかせねばなるまい。
水で洗い流すのが無難だろうか。
その後、風の魔法で乾かせば問題ないだろう。
それにしても、とルークは思う。
死体の処理をしないあたり、彼は相当に取り乱しているのではないだろうか。
証拠を残しておくなんて、愚の骨頂であろうに。
とは言え、ルークにとっては好都合。
というより、助かった。
あっちは殺す気、こっちは倒す気。
まともに戦って無事で済む自信なんて、全くと言っていいほど存在しない。
「父さんが言葉を濁すわけだよ……」
血の海を洗い流しながら、ルークは勝ち負けについて明言しなかった父の姿を思い出した。
なるほど、これだけの相手ならば勝てなかったのも頷ける。
だが、それならどうして父は生きているのだろうか。
噛み合わない。
知りたいと思って来たのに、ルークは未だ確かなヒントを得られていない。
見てくるのが一番だと姉は言ったが、見てもさっぱりわからない。
「姉さん、イケイケだからなぁ……」
特に深い意味もなく、勢いだけでルークに勧めた可能性はある。
というか、ソレしか考えられない。
もう少し冷静になるべきだったのかもしれない。
この時代は、思っていたよりも危険だ。
もう少し慎重に行動しないと、下手に目をつけられたら帰る事さえできなくなりそうだ。
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