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俺、嘘ついてた。
本当はお前のこと忘れてなかった。
お前の名前、忘れてなんかない。
お前のこと、すごく愛してた。
だからな、俺、事故にあった日、
お前とのペアリング買いに行ってた。
バイトはもちろん。
親父の仕事場の書類整理手伝ったり、
母親の我が儘聞いたりして、
頑張って金貯めてた。
それで、あの日、指輪をやっと買えた後だった。
俺、こんな顔なんだけど、顔にやけさせてすっげぇはしゃいでたんだぜ。
あ、今想像してキモイとか思っただろ。
たまたま、偶然だった。
駅前で、帰宅途中の人が多くて、道すごい混んでて、
人に、ぶつかってさ。
指輪、落としたんだ。
あわてて探したけど見つからなくてさ、
しゃがみ込んで必死に探した。
・・・みっともねぇだろ?
想像すんなよ?
やっと見つかったと思ったら、
偶然そこを通ったおっさんの足が指輪入った箱にぶつかって、
箱が飛んでいった。
思わず箱に飛びついてさ、
キャッチして、
箱が無事だって確認してため息をついたら、
偶然そこは道路だった。
かなり跳ね飛ばされたらしい。
でも、指輪離せなくてさ、
手術されたらしいけど、
意識回復するまでずっと離さなかった。
あ、覚えてねぇけど。
事故には遭ったけど、
指輪も買ったし、お前のこと好きだし、
あとは治すだけーって、思ってた。
けど、「余命半年です」なんて言われたら、
誰だって絶望するだろ?
親とか、医者とか、周りの奴らとか、
あの道とか、あの時周りにおった奴とか、
車の運転手とか、あの店の店員とか、
とにかくすっげぇ恨んだ。
お前さえも、恨んだ。
というか、一番恨んだのはお前かもな。
お前さえいなかったら、俺は指輪も買いに行かなかったし、
あの時間のあの場所にもいなかった。
事故にだってあわなかったし、
こんな絶望感じずにすんだんだって。
とにかく、お前を恨んだ。
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