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私の手には、花。
「はじめまして。」
あぁ、あと何回この言葉をあなたに言えば良い?
「……はじめまして…なのかなぁ?」
病室のドアを開けて、もう数十回目の挨拶をかわす。
頭に包帯をぐるぐると巻いて、
腕にも足にも至る所にぐるぐると巻かれて、
生々しい事故の傷が残る。
そんな弱々しい雅史の姿があった。
「俺…記憶喪失らしいね…
知らない顔がいっぱい、俺の顔見て泣きだすんだ」
痩せた肌。
「…そう…大変ね。」
「もしかしたらお嬢さんも俺の知り合いだったんじゃないの?」
「ううん…
私はただ貴方のお母様に花の配達を頼まれた花屋さんよ」
この会話は何度も繰り返した。
「いつか思い出したいんだけどなぁ…
医者には諦めろて言われたし…」
私はゆっくりと近づきながら、ベットの脇の花瓶を見つめる。
すぐに枯れる花。
「なぁ…
俺ってさ…前までどんな奴がまわりにいて、
どんな性格だったんだ…?」
「…さぁ…?私は貴方の知り合いじゃないから」
「そう、だよね…ごめん…」
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