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枯れた花言葉
枯れるだけの花に、与えられる水などない。
散りゆくだけの花に、残される希望などない。
「はじめまして」
彼女は必ず、いつもそう、悲しそうな笑顔で挨拶をする。
本当はそんな笑顔をするはずがない、俺の最愛。
笑った顔が可愛い、俺の恋人。
白い病室のベッド脇にいつもある花瓶は、
今だけ彼女の手によっていなくなっている。
「…なぁ…どうして、花、枯れるのが早いか知ってた…?」
ぽつんと呟いた独り言は、真っ白い布の中へと消えていった。
ベッド脇の引き出しの中には枯れ葉剤。
俺は毎日、何滴か入れていた。
「早く…枯れてしまえばいいんだ…」
パンジーの花言葉を一度調べた事があった。
危うく希望を持ちそうになってしまった。
本当は記憶喪失なんて嘘だ
君の顔や
君の表情。
君との思い出、
君への想い。
本当はすべて覚えている。
事故のショック、後遺症によって、俺は余命あとわずかとなった。
自分の下半身はもう意思がない。
次は腕か、次は何が動かなくなるんだろう。
生きる勇気もない。
ましてや大事な恋人、大事な仲間を傷付けてまで死ぬ勇気もない。
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