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その男は私に死体を見せた。
「これですか?」
「違います」
「いい加減にしてくださいよ、もう、これで28億8千2百62体目ですよ」
「しかし違うんです」
「困ったな私も暇じゃないんだよ」
どこかの知事のようにメガネをずらした男が私に文句を言う。
極めて事務的な男だ。
私一人が定員オーバーな事が恨めしいようだ。
「君も運のない男だな、いや、とんでもなく幸運な男と言うべきか?」
私は運のない男だ。
宝くじは当たった事はないし、結婚は失敗するし勤めてる会社は倒産するし、挙句のはてに、この始末、まさかここまで運がないとは、
ある日大国同士が戦争を始めた。
それが核戦争に繋がり人類すべてが死にたえた。
私も当然死んだ。
しかし皮肉にも最後に死んだ私は冥界の処理能力のキャリーオーバーになってしまっていた。
私が死を認められるには、一人が神になって欠員が出るまでかかるそうだ。
約一万年は死ねないらしい。
一人ぼっちの私では子供を作れないから、それしか方法がないらしい。
私がキャリーオーバーになる確率は、なんと2兆8千億分の一、なんでこんな数値かと言うと生存確率は地位や立場で変わってくるからである。
とにかく私は、この幸運?のお陰で後1万年生きなきゃやらない。
その事を悪く思ったのか死に神が死ぬ事以外なんでも望みを叶えてやると言うから、元の体に戻してくれと言うと、それ以後彼は私の前に死体を持ってくる。
私は黙々と自分の死体の確認作業を続けている。
これも違う
これも違う
あーどれ程の時間が過ぎただろうか?
これも違う
これも違う
これも違う
これも違う
これも違う
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