『黒と金の双子』

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《魔物の住処に近い  白く白く  雪に覆われた山村から  飛び出した村娘が一人    屈辱の赤さは  汚された乙女の血潮  処女雪のように、己さえも  白く白く掻き消えてしまえと  女が身を投じたのは吹雪の宵    死んだかに思われた  十月十日後  女が村に帰ってきたのもまた  激しい吹雪の中だった    その夜  母の命を吸い取る様にして  生まれてきたのは    黒髪の兄と、金髪の弟    親無しの双子はただ  お互いの温もりだけを支えに  寄り添った》     黒く汚れた雪は 汚れたままで ただ水に帰る春を待つ   鳴く鳥の声は 山に木霊し 灰色の空に 飛ぶ翼はない   吹雪の夜は抱き合って ただお互いの呼吸を数えてた   黒い髪の村人の中で 君だけは金の髪を輝かせ   挫けない心の強さ   負けない瞳の強さに   僕は君が眩しかった   いつも君の光に守られて 僕は兄なのに 泣いてばかりだった
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