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今日もまた陰陽事務所の主は飽きもせず引きこもっていた。
正確には引きこもっているのが目的ではなく、数ある趣味がことごとくインドアなだけなのであるが。
そこへ突如飛び込むベルの音。
電話とは違う安定した軽やかな呼び鈴は玄関から鳴っていた。
続いて扉が軋む音と共に明るい声が事務所に通る。
「こんにちは兄さん!博昭です。お邪魔します」
ベルが鳴っても見向きもしない清成はこの時初めて顔を上げた。
「出社するのに『お邪魔します』はないだろう」
「あは、まだ慣れなくて」
清成の日陰の苔のような印象とは対象的に、弟の雰囲気は明るく、凛として咲く花のようである。
弟の名前は御門 博昭。
清成の実弟では無いが、義兄をよく慕う素直な少年である。
高校生であるが、学校が終わると事務所に来てデスクワーク全般をこなしている。
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