14人が本棚に入れています
本棚に追加
第四章
「テロ……」
境一がか細い声で復唱した。
「でもシグレさん、さっき貴方ジャーナリストだって。
あ、でも――」
「俺はお前の思ってるような人間じゃない。
それに、俺は止める側ではなく起こす側だ。
本を書くというのなら、どんな物にせよ世界の総てをその目に焼き付けろ。
――良いから今は俺に付いて来い」
シグレの目が急に鋭くなった。
シグレ=ハダレインはテロリスト。
「テロなら、僕は止めますよ。
正義感なんかじゃなく、自分の意思で」
「ふっ、ならどうする。
俺を殺すか?
――とにかく、良いから付いて来いと言っている」
シグレが境一の上着の襟を掴んだ。
そして、その右手には小口径の拳銃が握られている。
それをシグレは高く掲げると、高らかに宣言でもするかのように上方向に構え、撃った。
タアァン――!
高い銃声が鳴った。
次に、その音に驚き静寂が一瞬支配した後、リジェクションにより排出された薬莢が柚床に落ちる。
その音が合図とでも言うように、途端に声が上がった。
「あ、うわああぁぁ!」
全員同じような声ばかりだ。
叫びが叫びを呼び、瞬く間に混乱が波紋のように広がった。
最初のコメントを投稿しよう!