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プロローグ
一人の男が歩いている。
出来るだけ人気の無い道を選びながら――
それでいてその意図を誰一人たりとも悟られぬように。
目指していたのは、とある民家の一角だ。
この男の家、という雰囲気ではないだろう。
何故なら、何処かその家屋だけが異様な雰囲気を纏っていたからだ。
人間が重い詰めた時に出すような、近くにいるだけで沈黙していなければならない空気が漂っていたのである。
コンコン……コン、コン。
と、不規則なリズムを刻んだノックをした。
だが、向こうから返事はない。
コン、コン……コン
一区間空け、また三度ノックをする。
「早く入れ」
ようやくドアが開いた。
毎度面倒な事とは思うが、やはりこの今の世界の現状を考えるとこのくらいは仕方ない。
「国連も、最近どんどん過激化していきやがる。
ったく、兵器で弾圧して我が物顔で街を歩き回りやがって。
これじゃ、ヒトラーの時より質が悪いぜ」
「ヒトラーか……
生存説なんてもんもあったが、まだ生きてんのかねえ」
「いや、死んでるだろ。
まだ生きてたら130超えてんじゃねえか。
流石に生きてはいないと思うが、俺は他国に逃亡したって説は本当だと思うぜ。
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