第三章

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「アイツ、島に居なかったみたいなんだ。 レナードの情報がガセだった訳じゃなくて、先手を打たれた」 雪花が車の運転席に乗り込んだ。 「情報が漏れてたの?」 「ああ、セイレンってのは中々優秀なネットワークを持ってるよ。 アイツの島も、魔界王が津波で破壊しちまったから、レイヴンの方は今は保留するしかないな」 「なるほど。 で、その謎の男の目星は付いてるの?」 雪花がアクセルをフル・スロットルで踏み込んでいた。 そして、蛇行運転さながらのテクニックで、次々と前の車両を抜き去って行く。 「残念ながら、オレの脳内でのヒットは無し。 でも、あの顔は一度見たら忘れねえよ…… ――どんな刺激にも反応しない、光の無い濁った目。 痩せ型の体躯に手入れの怠った顔」 「死人みたいだね」 「ああ、その通りありゃ死人だよ。 あらゆる物事に活を見い出せない、アンデッド(生きた死者)」 「あと、あの埠頭で戦闘になった理由ってあるの?」       ◆ 「それって、いったいどういう意味で」 「言ったままの意味だ。 それ以上でもそれ以下でもない」 「その言葉の意味が理解出来てたら、こんな風に一々聞かないですよ。
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