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その額には汗どころか緊張の表情すらも浮かべていなかった。
「――さっきの話の続きだけど、その男があそこで抗戦したのは何故?」
「男よりも先に、数人が貨物庫に入って何かを運び出してるのが見えた。
それが何かは解らねえけど、ReFの攻撃を自分が全て受けてたって感じだ」
「柚月は何でその男を追おうと思ったの?
柚月とは何の関係も無いかもよ」
「ゲイル=ミッドフォード邸に潜入した時に、電話を盗聴……というより壁越しに聞き耳を立ててたんだけどな、その時の言葉のリズムが似てるんだよ。
人間の言葉には、当人が気付かぬ内に刻んでいるリズムがある。
口調が早い奴や遅い奴のように。
向こうの言葉は聞こえなかったが、ゲイルの言葉から、どんなやり取りがあったのかはおおよそ予想出来る。
後は計算だ。
過去視で見たあの男の口の動きと、電話の男のリズムを比較する。
――ほぼ、ドンピシャリだったよ」
「じゃあ、戦り合うんだ」
「試してみるだけさ。
奴が関係人物なら――殺す」
柚月はそれきり黙り込んでしまった。
膝の上に乗せたヴァルナを、簡単にチューン(調整)していた。
もし、戦闘になれば全力を出す。
柚月はそう決めたから。
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