第四章

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ここは、素直に従っておくのが得策だ。       ◆ 柚月は、スタン・グレネード(閃光手榴弾)のピンを口で引き抜いた。 手榴弾は基本、ピンを引き抜いても手を放しレバーが戻らない限り爆発はしない。 柚月はそれを、ビルの入口めがけて投げた。 カラン、と金属の音を立てて閃光手榴弾が転がる。 「姉さんは、先に帰ってて、直ぐに終わらせて帰るから」 「ん、了解。 帰ったらまた私の持って来た服、着てみせてね」 「アリスと同じ思考回路だな……」 ――瞬間、強烈な閃光と音が発生した。 閃光手榴弾は、この二つで対象の平衡感覚を狂わせ、立てなくさせ無力化する物である。 目撃者の視界は潰れた。 この数秒で十分である。 一跳びで人混みを超え、入口へ到達する。 ヴァルナを抜き、タキオン・ドライブを起動。 剣身に粒子を纏わせ、扉に刃を当てる。 鋼鉄の扉に、難なくその刃が食い込んでいく。 後は、振り抜いて続けざまにアストレアを抜く。 閃光手榴弾の音で聴覚も麻痺している今の状況では、振動の高い音も無視して問題ない。 即座に最大出力の振動で扉を着る。 フィニッシュにもう一度ヴァルナでの斬撃を入れ、ようやく柚月一人が通る事の出来るスペースが生まれた。
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