第一章

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一日空けてしまったので、浴びようと思った訳である。 仕事柄、仕事中は何日も風呂に入らなかったりも無い訳ではないが、やはり入れるのなら入りたいと思うのが人間の常だろう。 身体の汚れを落とす為に、湯の温度は少し熱めにした。 アリスに最初に運ばれたホテルとは違うホテルなので、今回はご丁寧に浴槽まで付いていたりする。 少し値段が張る部屋を取ってくれたのだろう。 柚月も、やはりそこら辺はアリスに感謝したくなった。 壁にかけてあるシャワーから湯を出し、全身に浴びる。 ついでに、両手の指を使って湯と組み合わせて髪を解く。 髪の引っ掛かりが段々とましになっていくのが良く解った。 「ふう」 一息ついて目の前の鏡に手を付いた。 鏡は正直だ。 目の前の現実だけを正確に写し出してくれる。 「何で、戻れないんだ……?」 柚月の身体は、柚月の意思で自由に性別をシフト出来る。 なのに、何故か昨日から上手くいかない。 男に戻りたいのに、何故かこの女の姿から一向にトランスしてくれないのである。 昨日のアリスのお仕置きを恐れ、従ったのもこの為だ。 見ず知らずの男に妊娠させられてはたまったものではない。
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