第一章

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身体には何の異常も無い筈だ。 力が落ちた訳でもないし、魔力も普段通り出せる。 視覚や聴覚なども狂っていないし、自己診断だが何処にも異常はないとしか思えない。 「別に良いじゃない。 女の子のままで。 柚月はそっちの方が可愛いよ」 「アリス……」 この場所に入って来た時は柚月一人だった筈なのに、壁に背中を預けたアリスがいた。 いったい、どうやってここに現れたのか。 ドアを開ける音も、床を歩く水音も聞いていないというのに。 「オレは真剣なんだが、真面目に……」 「だから真面目に言ってるじゃん。 私はその姿のままで良いと思ってるよ。 せっかく柚月は男の子と女の子、どちらにもなれるのに…… それに男の子って、一度で良いから女の子になってみたい、って思うものなんでしょ?」「さあ、知らない…… そんな事思った事ないからな…… ――あと、アリスは男の風呂を覗くのが趣味なのか?」 柚月の言葉に、アリスが反応する。 柚月がすかさず体を反転させて、内側から外側に腕を振って石鹸を投げた。 「いやいや、今の柚月は女の子ですから」 アリスは壁に背中を預けて腕組みをしていた。 筈なのに――
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