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「そういや徳井、何持って帰って来てたん?」
井本さんに黒越しに突つかれている吉村を横目に、自分の腰辺りを見やる。徳井は円らな瞳を二三度瞬き、嗚呼と声を上げた。
「宇治原に借りてん」
俺が起きないと泣きついて来た徳井に、対処策としてうーじぃから持たされた物らしかった。取り落とした場所から綾部に運ばせた荷物を広げる。其処に入っていたのは、折り畳まれた紙と、うーじぃ本人が持つものより格段に小さな魔導書。折り畳まれていた紙には、魔方陣の様なものが書かれていた。
「えっと、此を寝てる福に掛けて…」
うーじぃに教えてもらったで有ろう手順を諳じる徳井。しかし第一段階で挫折。
「…福田、寝て」
「嫌やパスタ食べるんやもん」
徳井(と、徳井の黒の下から迫る吉村)の腕から皿を遠ざけながらパスタを口に運ぶ。
「食い終わる迄待てへんのか」
「待てへん! 今! 」
「…椅子の下敷いたらどないですか」
今まで大人しく見守っていた又吉が、俺の足元を指しながら呟く。
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