生きていても死んでいるような虚無

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 鼻に鋭い痛み。 鉄臭い滑らかな流れが唇を伝う。 背中に数人が乗り肩を押さえつけられているせいで起き上がれない。 熱を持ったコンクリートに押し返される胸が苦しい。 「こいつ鼻血出してる!」 「もう片っぽも出してろ」  また鼻を蹴られ視界を光が走る。 今度は横からだったので意識が飛ばずに済んだ。 「うっわ、超ださ」 「なんかもうつまんねーな、帰ろうぜ」  言葉を合図に背中の重みも肩の圧迫も消えた。 今回はあちこち痛めつけられたわけではないのですぐに立てる。 でも立たない。 まだ彼らがいるのに立ち上がればまた蹴られるに決まっている。 鼻血もまだ止まらない。  いなくなってからも用心してしばらく待ってから起き、服の砂を払う。 見える範囲で破れているところは見当たらないけれど、白い夏服は払ったくらいでは取れないほど汚れている。 マジックペンを取り出したような様子はなかったので落書きはされていないと思う。 掌にびっしょりかいた冷たい汗をズボンでぬぐった。 鼻血は止まった。  ため息をつく。 放課後はいつもこうだ。 校舎裏に来ては彼らに殴られる、蹴られる。 春には蛙を口に入れられたこともあった。 蛇をぶつけられて噛まれた時は毒が心配で不安でたまらなかった。 毒蛇が出るなんて聞いたこともないのに。 夏が過ぎて秋になったらきっと虫でなにかをやらされる。  彼らにとって僕に対するこうしたいじめはただの暇つぶしで、やめるきっかけがないから続けているだけなのだろう。 実際最近では前ほど熱意がこもっていないように感じられた。
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